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最高裁判所大法廷 昭和31年(あ)38号 判決 1958年9月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人森静の上告趣意について。

所論前段は、禁錮刑は受刑者を監獄に留置するだけであってこれを労働に従事させるものではなく、国家はただ糧食を給して無為徒食させるにすぎない制度であるから、憲法二七条一項に違反するものであり、従って被告人に禁錮刑を科した原判決は違憲であると主張する。しかし、禁錮刑は受刑者を監獄に拘置してその自由を制限し、監獄法その他の法規に定める厳格な規律の下に生活させ、本人が希望すれば作業にも就かせるのであって、決して受刑者を無為徒食させる制度ではないのみならず、憲法二七条一項は、一般国民に対して勤労の権利と義務を保障した規定であるが、犯罪による刑罰として犯罪者に対し自由刑を科し一般国民としての権利自由を制限し得ることは当然のことであって、法律により犯罪者に対し自由刑の一種として前記の如き禁錮刑を定めることは、右憲法二七条一項に抵触するものでないから所論違憲の主張は理由がない。所論後段は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一)

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